通常、バロックタイプのアルトリコーダーというとF管が主流ですが、当時のオリジナルリコーダーの中にはa’=415Hz付近のピッチで最低音がGの楽器も少なからず存在しています。F管に比べ、軽やかで可愛らしい音色が特徴です。G管アルトのオリジナルが現存している製作家として代表的なのはJ.B.Gahn、J.C.Denner、J.W.Oberlender、G.M.Anciutiなどが挙げられます。Bressanによるものは今のところ見つかっていませんが、もし彼がこのサイズの楽器を作っていたら…という発想の元、当工房では上野学園所蔵のBressan F管アルトを基にG管アルトを製作しています。
G管を使ってどのようなレパートリーを演奏するのか、という事はしばしば議論になります。1677年、イタリアのフェラーラで音楽理論家B.Bismantovaがリコーダーの教本を出版した際、そこに描かれた挿絵のリコーダーは歴史上初めてのバロックタイプで、その運指表はG管のものでした。この事から、当時のイタリアおいては、ルネサンス時代の流れを引き継いでG管アルトが主流のままであった可能性が考えられます。
A.VivaldiのコンチェルトやF.Manciniのソナタなどのイタリアの作品、その中でも#系の曲をG管アルトで吹くと、鳴りの良い運指で効果的に演奏することができます。また、J.S.Bachのブランデンブルク協奏曲第4番やG.P.Telemannのリコーダー協奏曲ハ長調などは、通常膝を使わなければ出ない高音F#が頻出するため、G管アルトでの演奏を想定しているとする説もあります。
リコーダー協奏曲 ハ長調 TWV51:C1 / Georg Philipp Telemann
使用楽器:ブレッサン アルトG管, a’=415Hz(製作 平尾重治)
演奏:山岡重治
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